法人で風俗営業許可を取得した後、会社分割と分割承認申請をすることで、許可を取得している店舗を子会社化したり、従業員に譲渡したり、あるいは第三者に売却することが可能です。
今回の記事では、分割承認申請の具体的手続き、申請方法について行政書士が解説します。
注)会社分割には、「吸収分割」と「新設分割」がありますが、今回は、風俗営業許可の分割承認申請で利用されることの多い「新設分割」での分割承認申請を解説します。
なお、会社分割と分割承認申請の概要や流れについては、下記記事を参照ください。
「風俗営業許可を取り直すことなく複数店舗の内、1店舗を譲渡する方法」
1、手続き全体の流れ
1,新設分割計画書の作成
2,新設分割計画書についての社内での承認手続き
(株式会社の場合は株主総会特別決議、合同会社の場合は総社員の同意等)
3,分割承認申請(警察署)
4,警察からの承認に関する通知
(なお承認しない場合は、理由を付した書面により通知される)
5,新設分割登記(法務局)
6,登記完了
7,許可証書換申請(警察署)
8,新しい許可証の受取
(参考)申請書様式(警視庁HP)
許可の承継の効力発生時期
新設会社の設立の登記の日より、新設会社にて営業開始できる。 それ以前は、分割前の会社で営業可能。
2,新設分割計画書とは?
新設分割は、分割会社(既存会社)が新設分割計画を作成し、株主総会や総社員の決議を得た上で、計画の承認を受ける必要があります。この新設分割計画を証する書面のことを、新設分割計画書といいます。
そして、分割計画書には、下記事項を記載する必要があります。
新設会社が株式会社である場合の分割計画書への記載事項(代表的なもの)
1,目的、商号、本店の所在地及び発行可能株式総数
2,新設分割設立株式会社の定款で定める事項
3,新設分割設立株式会社の設立時取締役等の氏名
4,新設分割設立株式会社が新設分割により新設分割をする会社から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項
5,新設分割設立株式会社が新設分割に際して新設分割会社に対して交付するその事業に関する権利義務の全部又は一部に代わる当該新設分割設立株式会社の株式の数又はその数の算定方法並びに当該新設分割設立株式会社の資本金及び準備金の額に関する事項
6,新設分割株式会社が新設分割設立株式会社の成立の日に次に掲げる行為をするときは、その旨
①第百七十一条第一項の規定による株式(全部取得条項付種類株式)の取得
②剰余金の配当(配当財産が新設分割設立株式会社の株式のみであるものに限る。)
新設会社が合同会社である場合の分割計画書への記載事項 (代表的なもの)
1,持分会社である新設分割設立会社が合名会社、合資会社又は合同会社のいずれであるかの別
2,目的、商号及び本店の所在地
3,新設分割設立持分会社の社員についての次に掲げる事項
①当該社員の名称及び住所
②当該社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別(合同会社の場合は、有限責任社員のみ)
③当該社員の出資の価額
4,前二号に掲げるもののほか、新設分割設立持分会社の定款で定める事項
5,新設分割設立持分会社が新設分割により新設分割会社から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項
6,新設分割株式会社が新設分割設立持分会社の成立の日に次に掲げる行為をするときは、その旨
①第百七十一条第一項の規定による株式(全部取得条項付種類株式)の取得
②剰余金の配当(配当財産が新設分割設立株式会社の株式のみであるものに限る。)
3,分割承認申請の具体的手続き
申請先
当該許可に係る営業所の所在地を管轄する警察署
申請者
新設分割の場合は、分割をする法人が行う。
※なお、吸収分割の場合は、分割をする法人と承継する法人が連名で行う。
必要書類
1,分割承認申請書
2,分割計画書の写し
3,分割により風俗営業を承継する法人の役員となるべき者(分割後の役員就任予定者)の氏名及び住所を記載した書面
4,分割後の役員就任予定者に係る住民票の写し(本籍記載、個人番号未記載のもの)
5,分割後の役員就任予定者に係る身分証明書
(本籍地で取得する破産や後見登記されていないことを証明するもの)
6,誓約書(欠格事由に該当しない旨の誓約、時間外営業しない旨の誓約)
7,新設会社の予定定款
4,手続きの順番が重要!
風営法第7条の3での規定により、会社分割により風俗営業を承継させる場合は、あらかじめ当該分割について公安委員会の承認を受ける必要があります。
分割承認申請をする前に、先に、法務局で会社分割登記を行った場合は、申請は受理されませんので、注意してください!
5,新設分割登記の手続き
新設分割登記については、司法書士さんに依頼した方がよいと思いますが、手続きの流れについては把握しておいた方がよいです。ここでは、概要のみ記載します。
既存の会社が株式会社で、株式会社を新設する場合
1,分割計画の作成
2,株主総会を開き、分割計画につき、特別決議により承認を得る
3,債権者保護手続きを行う
(官報公告及び知れたる債権者への各別の催告)
※ただし、下記の場合は債権者保護手続きは不要
①新設分割設立会社に承継される債務が一切ない場合
②承継される債務はあるが、新設分割会社が当該債務の連帯保証人となっている場合
4,登記申請
既存の会社が合同会社で、合同会社を新設する場合
1,分割計画の作成
2,<権利義務の全部を承継させる場合>分割計画につき、総社員の同意を得る
<権利義務の一部を承継させる場合>分割計画につき、社員の過半数の一致を得る
3,債権者保護手続きを行う
(官報公告<計算書類事項の広告は不要>及び知れたる債権者への各別の催告)
※ただし、下記の場合は債権者保護手続きは不要
①新設分割設立会社に承継される債務が一切ない場合
②承継される債務はあるが、新設分割会社が当該債務の連帯保証人となっている場合
4,登記申請
申請の方法
新設分割設立会社の「新設分割による設立の登記」と分割会社の「新設分割による変更の登記」を同時に申請する必要があります。
なお、管轄が異なる場合は、新設会社の本店の所在地における登記所に対して、申請を行います。
(分割会社の変更の登記については経由申請になります)
6、確実に手続きを進めるには?
分割承認申請は手続きが複雑で、手順を間違うと許可が失われるケースもあります。
確実に行うには、風営法関連手続きの専門家である行政書士にご相談・ご依頼ください。
(また、経営者の方からお話しを直接聞くことで、会社分割より適した手続き手法を提案できる可能性もあります)
お電話やメールによる相談は無料です。
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