改正風営法(案)が公表!R7

いわゆる悪質ホストクラブに端を発した風営法改正の動きが昨年(令和6年)ありましたが、ついに本日令和7年3月7日付で警察庁から風営法改正案が公表されました。

すでに閣議決定もされたとの報道もありましたので、この改正案が、そのまま本年国会で可決され、その後1ヶ月以内に施行される見通しです。

無許可営業に罰金3億円 風営法改正案を閣議決定 悪質ホスト対策 | 毎日新聞

今回の改正で、今までと何が変わるのか、ホストクラブ以外の水商売にも影響があるのかについて、本記事では解説します。

1,風営法改正案の概要

今回の風営法改正(案)の概要は下記の通りです。

風俗営業法の改正案 ポイントは 新たな規制や罰則強化について詳しく | NHK | ニュース深掘り

①キャバクラ・ホストクラブ等の接待飲食営業者の遵守行為と禁止行為に下記を追加
 a.料金に関する虚偽説明
 b.客の恋愛感情等につけ込んだ飲食等の要求
 c.客が注文していない飲食等の提供
 d.客に注文や料金の支払等をさせる目的での威迫
 e.威迫や誘惑による料金の支払等のための売春(海外売春を含む)、性風俗店勤務、AV出演等の要求
 ※d及びeについては罰則あり

②性風俗店によるスカウトバックの禁止

性風俗店を営む者がスカウトバック等から求職者の紹介を受けた場合に紹介料を支払うこと(いわゆる「スカウトバック」)を禁止(罰則あり)

スカウトバック禁止

③無許可営業等に対する罰則の強化
現行・・・2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
改正後・・5年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(無許可営業を営んでいるのが法人の場合、罰金は3億円以下まで引き上げ)

④風俗営業からの不適格者の排除
次の者を風俗営業等の許可に係る欠格事由に追加

a.親会社等が許可を取り消された法人
b.警察による立入調査後に許可証の返納(処分逃れ)をした者

c.暴力的不法行為等を行うおそれがある者がその事業活動に支配的な影響力を有する者

不適格者の排除における「親会社等」とは?

具体的には、下記、甲が風営許可申請をする際、A、B、Cが許可を取り消されている場合、甲についても5年間は許可を取得することができません。

親会社等

なお、風営法条文上は、下記の通りです。

①当該許可を受けようとする者の株式の所有その他の事由を通じて当該許可を受けようとする者の事業を実質的に支配し 、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの(②において「親会社等」と いう。)
②親会社等が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの
③当該許可を受けようとする者が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの

※国家公安委員会規則については、現時点ではまだ定められておりません。

禁止行為の中の「恋愛感情等」とは?

禁止行為の中の、恋愛感情等については、条文上は、下記の通りになっておりますが、警察の取締りがどのようなケースを具体的に摘発するかについては、今後警察庁から公表される「風営法解釈運用基準(改正後)」を待つ必要があります。

「風営法第18の3 二」
客が、接客従業者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該接客従業者も当該客に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、次に掲げる行為により当該客を困惑させ、それによつて遊興又は飲食をさせること。

①当該客が遊興又は飲食をしなければ当該接客従業者との関係が破綻することになる旨を告げること。
②当該接客従業者がその意に反して受ける降格、配置転換その他の業務上の不利益を回避するためには、当該客が遊興又は飲食をすることが必要不可欠である旨を告げること。

売掛金規制はどうなった?

今回の風営法改正の発端となった悪質ホストクラブ等の売掛金問題ですが、
結論とすると、今回の改正で「売掛金」や「ツケ払い」などは規制されませんでした。
一方で、こうした未払の飲食代を支払わせる目的で、次の行為をすることが禁止されました。

①「支払わないなら親元や勤務先へ行くぞ」など、客を脅して困惑させる行為。
②怖がらせたり、誘惑したりして、売春(海外売春を含む)、性風俗店勤務、AV出演等を要求する行為

※上記禁止行為を行った場合、6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金が科されます。

2,令和7年風営法改正案の具体的条文等

警察庁WEBサイトに公開されておりますが、下記の通りです。

要綱

案文・理由

条文新旧対照表

参照条文

改正の背景 悪質ホストクラブ対策

ホストクラブ等の売掛金等に起因する事件等が相次ぎ、警察庁が中心になり、悪質ホストクラブ対策検討会が令和6年において5回開催されております。

その検討会での最終報告書をもとに、今回の風営法改正案が策定されました。

3,ホストクラブ以外への影響は?

上記1の改正概要の通り、今回の改正案はホストクラブのみが影響を受けるものではありません。

悪質ホストクラブ対策に端を発した今回の改正ですが、ホストクラブ以外の水商売の方々にも影響がありますので、改正内容を熟知し、法令遵守する必要があります。

特に、下記の点について、きわどい経営を行ってきた風営業者は注意が必要です。
①無許可営業・名義貸しに関する罰則が大幅に強化された
②親会社等が許可を取り消された法人は許可が5年間は取得できなくなった
③警察立入調査後に聴聞(取消処分に関する)の期日が決まる前までに廃業手続きをすることで取消処分を逃れていた風営業者は許可が5年間は取得できなくなった

また、いわゆるキャバクラや銀座のクラブ等でも、客の恋愛感情等を利用して高級なシャンパンやボトルを入れされることは、ホストクラブに比べればマシかもしれませんが、少なからずあるかと思います。そうなると、どこまでがセーフで、どこまでやると営業停止などの行政処分の対象になるかは、今後、公表される「風営法解釈運用基準(改正後)」を待つ必要があります。
(なお、この行為による風営法上の罰則規定はありません)

4,悩んだときは…

今回の記事では、令和7年風営法改正について解説しましたが、
今回の改正を機に、「遵法営業を行いたいがどうすればよいかアドバイスがほしい」、「何をしたら罰則対象になるか相談したい」など、真剣に考えている経営者の方もいらっしゃると思います。

その場合は、お気軽に風営法専門の行政書士事務所にご相談ください。

⇒ 新宿行政書士事務所 03-6675-9016

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