ガールズバー、コンセプトカフェ、キャバクラ、ホストクラブなどのナイトビジネスの経営者の方からたまにこういった相談があります。
「警察の立入があり、呼び出しされました。どうしたらよいですか?今後どういった処分になりますか?」
今回の記事では、「深夜酒類提供飲食店営業」や「風俗営業」の許可後(届出後)における行政処分や罰則について風営法専門の行政書士が解説します(無許可・無届での場合についても解説)。
1,呼び出しされた場合の対応
警察から呼び出しされた場合は、まずは必ず警察署に行きましょう!
これを無視するのが一番悪手です。無視し続けると、逮捕まで行く可能性があります。
<呼び出し後の主な流れ>
①警察署に行くと、呼び出しをされる原因になった違反事実について説明され、それを認めるか、その理由等を聞かれます。その後「弁明通知書」という書類を交付されます。
そして、翌週が翌々週くらいまでに「弁明書」を提出するよう要求されます。
②指定された日時に「弁明書」を提出に行きます。弁明書の内容は、警察官が指摘した違反事実を認めている場合は、法令違反を是正するような対策と反省文のような内容になります。違反事実を認めない場合は、反論やその証拠を記載する内容となります。
③警察官が指摘した違反事実を認めている場合は、②と同じタイミングで「指示書」という書面を交付され、指示処分がされたことになります。事実を認めていない場合は、また翌週から翌々週くらいにくるように言われ、そのタイミングで「指示書」を交付されるか、弁明の内容に理由があるということで、レアケースですが、お咎めなしになることもあります。(なお、事実を認めていても、翌週等に再度来るよう言われるケースもあります)
注)指示処分とは、不利益行政処分の一つで、風営法第25条で下記の通り定められております。
「公安委員会は、風俗営業者又はその代理人等が、当該営業に関し、法令又はこの法律に基づく条例の規定に違反した場合において、善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し、又は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認めるときは、当該風俗営業者に対し、善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要な指示をすることができる。」
<指示処分されるとどうなるか>
すぐにはどうにもなりません。今まで通り営業可能です!
ですが、次にまた風営法違反があると、営業停止処分をされる可能性が高くなります。
よく「指示処分は何回までであれば、営業停止になりませんか?」などと質問されることがありますが、これについては、次の違反までの期間や、その違反の程度など、総合的に判断されますので、2回目ですぐに営業停止処分になることもあれば、3回くらいまで指示処分で済むこともありますので、一概にはいえません。
また、①深夜酒類提供飲食店営業の届出のみをしている店舗や②飲食店営業のみ取得している店舗が、①の場合は、風俗営業許可を取得するか接待行為をやめるように、②の場合は、深夜酒類提供飲食店の届出をするか深夜営業をやめるように、と指示されるケースもあります。
その場合、指示に従わずにそのまま営業を継続すると、営業停止処分だけに留まらず、逮捕されるケースもありますので、ご注意ください!
いずれにせよ、指示処分で済む内に、法令遵守に立ち返ることが重要です!
2,営業停止や許可取り消し
営業停止(取消)は指示処分より重い不利益行政処分で風営法第26条に下記の通り規定されております。
「公安委員会は、風俗営業者若しくはその代理人等が当該営業に関し法令若しくはこの法律に基づく条例の規定に違反した場合において著しく善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認めるとき、又は風俗営業者がこの法律に基づく処分若しくは第三条第二項の規定に基づき付された条件に違反したときは、当該風俗営業者に対し、当該風俗営業の許可を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて当該風俗営業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。」
主な行政処分を下記に列挙
A、取消し
・名義貸し違反
・営業停止命令違反
B、40日以上6月以下の営業停止等命令。基準期間は3月
・広告宣伝規制違反に対する指示処分違反
C、20日以上6月以下の営業停止等命令。基準期間40日
・構造設備の無承認変更及び承認の不正取得
・客引き禁止違反
・年少者接待及び接客従事禁止違反
・広告宣伝規制以外の指示処分違反
・許可条件違反
D、10日以上80日以下の営業停止命令。基準期間20日
・認定の不正取得
・構造設備維持義務違反
・営業時間制限違反
・騒音振動規制違反
・広告宣伝規制違反
・年少者立ち入らせ
・未成年者への酒類たばこ提供
・従業者名簿備え付け義務違反
E、5日以上40日以下の営業停止等命令。基準期間は14日
・特例風俗営業者の営業所の構造設備変更届出義務違反
・照度規制違反
・管理者選任義務違反
F 5日以上20日以下の営業停止等命令。基準期間7日
・変更届出義務違反
・認定証返納義務違反
・報告資料提出義務違反
・立入の拒否、妨害、忌避
G、営業停止等命令を行わないもの
(指示処分に限り、当該指示処分に違反した場合に当該指示処分違反を処分事由として営業停止等命令を行う。)
・許可証及び認定証亡失滅失届出義務違反
・許可証掲示義務違反
・許可証書換え義務違反
・許可証返納義務違反
・料金表示義務違反
・年少者立入禁止表示義務違反
・管理者講習受講義務違反
H、5日以上80日以下の営業停止等命令。基準期間は各都道府県において定める。
・条例遵守事項違反
行政処分と刑事手続(罰則)の関係
行政処分をされるケースは違反事実が刑罰にも触れることが多いですが、行政処分と刑事裁判は別の手続きだから、それぞれ独立に進みます。ただし、警察としては、常に並行して捜査を行うことはなく、むしろ、風俗営業に関しては、事前の指導によって是正できるのであれば、行政処分を優先するというのが基本的な考え方のようです。
ただし、当然ながら、行政処分と刑事処分の両方が処されることもあります。
3,風営法違反による主な罰則
下記に風営法違反による主な罰則(刑事処分)を列挙します。
2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科
①風俗営業の無許可営業(特定遊興飲食店営業の無許可営業)
②不正の手段による許可等の取得
③名義貸し
④営業停止命令違反(営業廃止命令違反)
⑤営業禁止区域違反(営業禁止地域違反)
1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科
①営業所の構造設備の無承認変更(風俗営業・特定遊興飲食店営業)
②不正の手段による承認の取得
③風俗営業等の禁止行為違反(年少者等保護)
④深夜における酒類提供飲食店営業の禁止地域違反
6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科
① 風俗営業等の禁止行為違反(客引き)
②パチンコ屋・ゲームセンター営業等の禁止行為違反(賞品提供等)
④性風俗関連特殊営業の無届営業
100万円以下の罰金に処する
①広告宣伝の禁止違反・方法違反
②従業員名簿備付け等違反
③接客従業者の年齢等確認義務違反・記録の作成保存義務違反
④公安委員会の報告要求等に関する違反
50万円以下の罰金に処する
①風俗営業等に係る虚偽の許可申請書等の提出(特定遊興飲食店営業も同じ)
②ぱちんこ屋営業等の禁止行為違反(遊技球等の店外持ち出し等)
③管理者の選任義務違反
④深夜酒類提供飲食店営業等の無届・変更届・廃止届提出義務違反
30万円以下の罰金に処する
①許可証等の掲示義務違反
②許可証等の書換え義務違反
③営業所の軽微な変更の無届
④許可証の返納義務違反
4,逮捕された場合の流れ、対策
昨今、警察による風俗営業許可の無許可営業による逮捕が相次いでおります。
《摘発の一部始終「動くな!」》連行された女の子はガクガク震え…歌舞伎町“女優と飲める”SODランドに警察官がなだ
逮捕されたら、その後どうなるのか、またその対策等について知りたい方は、
こちらの記事を参照ください。
5,何をしたら風営法違反になるか専門家に相談したい
「遵法営業をするつもりだが、何をしたら風営法違反になるか知りたい」
「そもそも、自分の営業・業態は警察に何か手続きをすべきなのか聞きたい」
などのお悩みをお持ちの方は、風営法関連の手続きのプロである行政書士にぜひご相談ください。
お電話による相談は無料です。
新宿行政書士事務所 03-6675-9016
<参考>営業ごとに必要な警察への続きの概要を知りたい方はこちらの記事「風営法関連営業の全体像」を参照